指圧治療と言えば昔は「腰痛」「膝痛」「肩こり」が治せればメシが食えると言われていました。しかし現在のようにトラブルが多様化してくると、とても昔のようなわけには行きません。昨今の施術家には、来院したお客さんや利用者さんをただ無造作に施術するのではなく、気を配った繊細さや丁寧さが求められるようです。昨今の治療室事情をお話しします。
昔は一発芸のような強い施術だった
一昔前なら肩なら肩だけ、腰なら腰だけを緩める一発芸のような施術だけで、利用者さんの満足を得られました。求められたのは手指の強さや力の強さだけでした。今でもその名残で街中のマッサージ屋さんはそうですよね。でもそれは健康な人(実証と言います)のお客さんのみです。このタイプに属する人は、一般に体格がよく、体力もあって丈夫な人たちです。従って多少雑な施術(失礼!)でも案外平気で、気持ち良く感じてくれるものです。そして体力があるので抱えている症状も、スッと取れてしまう特徴があるのです。すると「ああ良かった。施術は強めに限る」と言って帰宅されるわけです。ところがこれに合わない利用者の方も居るのです。と言うか増えて来ました。
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痛いだけの施術は苦手…
強い施術が合わないと言う人の理由を聞いてみますと、皆異口同音に「痛いだけで、気分が悪くなる」とか「痛みが残ったり、後から変な具合になってくる」などと言います。実は私も近所のマッサージ屋さんに行った時、力任せに40分間ゴリゴリと施術されて痛くて辛い思いをし、帰宅後から耳鳴りが起こり苦しんだ経験があります。ゴリゴリ施術でトラブルを経験をした方は意外と多いようです。ではなぜゴリゴリ施術でトラブルが起こったのでしょうか。それは体(体力)がその強い施術について行けなかったからです。一般に強いゴリゴリ施術が苦手な人というのは、痩せ形で体力がないタイプ(虚証と言います)に多いようです。つまり強いマッサージは体力のある「実証」には効きますが、私を含めて「虚証」のタイプには刺激が強すぎて効かない。痛くてつらいだけ…という人もいるのです。そして辛いどころか、強い施術で自律神経のバランスを崩して体調が悪くなる事があります。こうなると一発芸のような施術では対応できませんね。
体力・体調に合わせて欲しい
私の場合は一週間近く耳鳴りがありました。それも朝がた目覚めると、突然耳の奥で「ぽこぽこ、ぽこぽこ」と鳴るんですね。別に痛くはないのですが、気持ち悪いですよこれ。とても気になりました。思えば疲れて体調に悪いときに、強い施術を受けたのが原因だったと思いました。ですから体調が良くない時はゴリゴリ施術では困ります。とくに自分は「体力がない(虚証)」と自覚している方は避けた方が無難です。ではどうすれば良いのか。施術中にそのような施術を受けてしまった時は、治療師を変えてとは言いにくいですよね。このような時には「触れられてはイヤな箇所」を言って、それ以外のところを施術してもらえばいいんです。私の場合を言うと、私は首に不安があるので、首以外の背中とか腰とか腕を施術してもらいます。そして強さにもドンドン注文をつけます。概して利用者の方は相手に遠慮して、辛くても我慢している事が多いですね。しかしそんな我慢は不要なので注文をつけて下さい。治療師もそんな注文をたくさん聞く事で、利用者の体調に合わせた施術が出来るようになるのです。
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体力がない人には指圧が最適…
手前味噌になりますが、最後に指圧について述べさせて下さい。このような強い施術は苦手だとか、体力や体調に不安があると言う方には指圧がおすすめです。私も仕事柄、他の治療院やサロンに出かけて施術を受ける事があります。だいたいマッサージ系が多いですが、普段から指圧を受け慣れている私の印象としては「マッサージはせわしない」というのが印象です。これは受け慣れている方からすれば「何いってんの…」という感じかも知れません。しかし施術がゴリゴリ忙しくて落ち着かない感覚はあります。これは神経を興奮させているからです。しかし常識で考えても解りますが、真にリラックスしたい時は興奮刺激はダメで、神経を鎮めなくてはいけません。「ゆったり・穏やか」な感じにする必要があります。このような違ったモードにするためには、施術はリズミカルではなく、ゆったりとしたスローなペースがいいのです。例えば40分くらいゆったり丁寧な施術を受けると、昂ぶった神経も穏やかに鎮まって来るものです。指圧では利用者さんの体を労わるような丁寧な施術を、ゆったりと順序を踏まえて行うわけです。通常うつ伏せて20分、仰向けで20分、そして重点部を15~20分行って仕上げます。
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≪当会の沿革≫ 経絡指圧普及会・池袋治療室
当会は昭和63年に東京・国分寺市にてプロ指圧師の再教育の場として発足いたしました。業務内容は仕事に使える「全身指圧」習得のための入門、初級、中級の各種講座の『セミナー運営』と施術室での『指圧治療』です。特に治療では、古来から伝わる漢方式の施術を実践し、利用者の皆さんの体の不調を治す指圧を実践しています。
平成16年には活動の拠点を東京の池袋に移し、現在はインターネットやSNSで幅広く対応しながら、一方では設立の精神である「寺子屋」式にこだわり、人間臭いコミュニケーションを重視して経絡指圧の実践に努めています。
経絡指圧普及会:℡.03-3985-1060、 メールでの問合せ